平成9年度から12年度では理論解析、2次元の流体およびMHDシミュレーションによって以下の点が明らかになった。 1.流体及び磁気流体のケルビンーヘルムホルツ(K-H)不安定の2次元の非線型発展段階では発生した渦は合体していき、磁場が2次元の流れに垂直な磁気流体の場合には渦にともなって電流渦も発生し電流渦も合体していくことがわかった。流体およびMHDのいずれの場合でもK-H不安定に伴う2次元での渦の合体は運動エネルギーが保存し渦度の自乗積分(エンストロフィー)が最小に向かう自己組織化の過程であることが明らかになった。また波数空間内での運動エネルギーとエンストロフィーのスペクトルの時間発展を調べることにより、この自己組織化は波数空間内での運動エネルギーの逆カスケードによって起こることが示された。そしてK-H不安定による運動量輸送は自己組織化の過程に依存し、自己組織化によって異常粘性輸送は大きく増大することが示された。また自己組織化による渦の合体は磁気圏界面において界面の振動の周期が下流に行くにしたがって長くなるという観測結果を定量的に説明できることも明らかになった。 2.MHDのエネルギー原理と擾乱解析に基づく理論解析によって、磁場がテイル状になった磁気圏で起こるバルーニング不安定性では圧縮性の効果が無視でき、初期に行われた非圧縮性を仮定した磁気圏のバルーニング不安定性の線形解析の結果が妥当であることが示された。この結果から磁気圏がテイル状になってくると起こる磁気圏のサブストームの開始機構にバルーニング不安定が絡んでいることが示唆され今後の研究の指針となった。
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