太陽風の非スパイラル磁場は、太陽面上の放出源の不均一性、非定常性を反映していると考えられ、太陽面と太陽風を結ぶ手がかりとして有用である。本研究では太陽風中の非スパイラル磁場のひとつである「平面状磁場構造」について、ジオテイル衛星による、太陽風中での磁場と荷電粒子観測を用いて以下の様な成果を得た。 太陽風中の「平面状磁場構造」は、磁場ベクトルが不連続面に平行なままで数時間にわたり不規則に変化する現象として観測され、局所的には平面的な構造と考えられる。周波数別に磁場変動を解析しても、磁場の変化方向は同一平面に極在していた。しかし、磁力線の大規模なトポロジーは未解明である。特に、太陽表面に現れる磁力線の閉ループ構造との関連の解明が必要であるが、磁力線の両端が太陽面につながっていることを立証するためには、荷電粒子の分布の状態が磁力線に沿った両方向に流れるbi-directional flowの存在を示すという方法が良く使われる。本研究では「平面状磁場構造」中で観測されたイオン、電子の分布関数を調べたが、太陽起源のbi-directional flowを示す例は無かった。 「平面状磁場構造」は、磁場だけを見ると多層のtangential discontinuityのように見えるが、これを確かめるには3次元の太陽風速度、密度の観測が必要である。本研究では、1994年6月から1997年7月までの期間に見つかった61例の「平面状磁場構造」について、不連続面の法線方向をminimum variance法で求め、その方向の質量フラックスが保存するように不連続面の速さを決めたところ、全ての例において計算誤差と比べて充分な精度で太陽風速度成分と不連続面の速さが一致し、「平面状磁場構造」がtangential discontinuityであることが確かめられた。磁場不連続面に沿った方向には速度差のある場合もあり、同じ速さを持つ数十個のtangential discontinuityの小集団が、不連続面を境に横にずれるように運動していると考えられる。
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