研究概要 |
現在の技術ではコロナ磁場の直接観測は不可能である。そこで従来から,コロナ中には電流が流れていないと仮定するコロナ磁場の「ポテンシャルモデル」を用いて,太陽光球磁場の観測値からコロナ磁場を推定する方法が用いられてきた。この研究では,太陽光球磁場が太陽表面に垂直であるという仮定を採用した新しいタイプのコロナ磁場のポテンシャルモデル(RFモデル)を開発した。このRFモデルを光球磁場観測値に適用し,太陽活動度の比較的低い期間にあたる1909カリントンローテーション(CR1909)のコロナ磁場の三次元構造を可視化し,この期間における磁場膨張係数のシノプティックマップ描いた。一方,コンピュータトモグラフィの方法を用いて,惑星間シンチレーションの観測値から,同じCR1909の太陽風速度のシノプティックマップも作成した。これ等二種類のマップの,同じ緯度経度上(180×360点)のデータを用いて散布図を描いたところ,コロナ磁場の膨張係数と太陽風速度との間には非常に良い負の相関のあることが分かった。単純相関係数は-0.72と高く,統計的に非常に有意である。これは,コロナ磁場の膨張が大きい領域からは低速太陽風が吹き出し,磁場の膨張が小さい領域からは高速太陽風が吹き出していることを示している。この研究結果が太陽活動周期のどの期間でも常に成り立てば,磁場膨張係数と太陽風速度の間の関係を示す経験式を用いて磁場膨張係数から太陽風速度を推定することが出来る。今後の研究では,太陽活動度の高い期間のデータを用いて同じ解析を行い,今回の結果と比較することにより,コロナ磁場膨張係数と太陽風速度との間の関係式を導出することを試みる。
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