地球磁気圏尾部で観測されるバースト的な高温・高速プラズマの起源を理解することを目標とし、大規模・高精度MHDシミュレーションにより、高温・高密度プラズマ・シートの磁気リコネクションの非線型発展を調べた。磁気リコネクションとバルーニング不安定の競合過程を調べるのが最終目標であるが、本年度は空間2次元のMHDシミュレーションに限定し、磁気リコネクション過程の微細構造の理解に主眼を置いた。特に、1)磁気リコネクジョンの起きる前のプラズマ・シートとリコネクションが起きた後のプラズマ・シートが相互作用する領域でのプラズマ圧縮・加熱の過程、2)遅進衝撃波で加熱・加速されたプラズマとX型磁気中性点で加熱されたプラズマの加熱率や熱エネルギー配分の違いなどを中心課題として研究を行ない、磁気圏尾部の衛星観測で得られている複雑なプラズマ・シートの構造を考察した。そして、大規模・高精度MHDシミュレーションで得られたプラズマ・シートの構造を2次元リーマン問題の枠組みで理解すると、従来のPetschek型の遅進衝撃波を伴う単純なプラズマシートだけではなく、それ以外に高密度のプラズモイドの伝播によってその前面にできる衝撃波、プラズモイド内部にできる不連続面などといった、領域によって異なった重要性をもつプラズマ・シート全体のMHD衝撃波や不連続面の構造が同定された。またこのシミュレーション解析結果から、磁気圏尾部で観測される温度や密度の異なるプラズマ領域を有する複雑なプラズマ・シートの多様な形態を理解する指針が得られた。
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