研究概要 |
北海道の前期中新世火山岩は,東部北海道には分布せず北部〜中央北海道西縁部に南北方向に認められる。これらは玄武岩と流紋岩のバイモーダルな火山活動で特徴づけられ,北から順に,宗谷岬〜礼文島(玄武岩〜ドレライト),敏音知岳(流紋岩),樺戸(青山玄武岩),夕張〜馬追(滝の上層安山岩),南端の勇払および苫小牧沖合いの坑井まで追跡可能である。このうち勇払周辺の坑井では,玄武岩〜玄武岩質安山岩のスコリア凝灰岩や火山角礫岩,苫小牧沖合いの坑井からはデイサイト〜流紋岩溶岩の厚層(1000m以上)が確認できる。これらのうち玄武岩類についてみると,宗谷岬〜礼文島はアルカリ玄武岩,青山玄武岩は高アルカリソレアイト,SrとNd同位体組成からは,青山玄武岩および夕張〜馬追地域の安山岩がBulk Earthに近いエンリッチ組成を示す。これらの塩基性火山岩は,エンリッチな大陸下リソスフェアの部分溶融によって生じたと推定される。流紋岩類は,この玄武岩質マグマを熱源にした地殻物質の溶融によって形成されたと考えられるが,今後の岩石学的裏付けが待たれる。 北部〜中央北海道西縁部に生じた前期中新世火山活動の原因は,オホーツク海の拡大を引き起こした島弧会台テクトニクス,すなわちユーラシアプレートにオホーツクプレートが衝突しその後の右横ずれ断層によってオホーツク海が拡大し,その右横ずれ断層に沿う引張場における活動と考えられる。このことは,この火山活動の直前に生じた右横ずれ断層運動に関連したプルアパート盆地の存在によっても裏付けられる。
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