研究概要 |
鬼首-湯沢マイロナイト帯は,笹田(1984,1985)が宮城県北西の鳴子ダム付近から秋田県湯沢市東方にかけてNNW-SSE方向に伸びる約45kmの直線上において新第三系の基盤の花崗岩中にマイロナイト(圧砕岩)が分布するということで命名された.その断層帯の実体および断層活動史を明らかにするために,本年度は鬼首-湯沢マイロナイト帯南部に位置する宮城県鳴子町の寒風沢周辺の詳細な地質調査・断層岩の解析と,軍沢周辺の予察的地質調査を行った. 寒風沢周辺では,マイロナイト化した基盤の花崗岩は,3本のNW-SE方向の新第三紀層を切る断層に規制されて分布し,断層岩の岩石構造・再結晶石英粒の解析から,NNW-SSE方向の幅数100mにわたる左横ずれの不均質剪断帯を形成していることが明らかになった.また新第三紀層の中にはNW-SE方向のの断層周辺にだけ基盤岩礫(花崗岩)を多量に含む砂岩層が見いだされた.この砂岩層の分布様式から,NW-SE方向の断層運動にともなって形成されたことが推定され,その活動が中新世にさかのぼることが明らかになった. 予察的地質調査により,軍沢周辺には寒風沢よりも広範囲に断層帯内部の岩石が露出しているのがわかった.このことは,来年度の調査の軍沢周辺の詳細な調査によって,断層帯内部の解析が進むと考えられる. 本年度は,大きな断層岩試料加工のために大型岩石切断機,軟弱試料や断層粘土を加工するための真空減圧デシケーター・真空ポンプ・オイルで冷却する特殊切断機を購入して断層岩試料作成設備の整備を行った.特に軟弱な試料の観察試料を作成する加工方法について,これらを用いて,現在いろいろと試行している.
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