研究概要 |
本年度は,鬼首-湯沢マイロナイト帯の岩石の露出する地域のうち,宮城県鳴子町大森地域と鳴子ダム周辺の詳細な調査,秋田県湯沢市麓沢の予察的地質調査を行った.大森地域の断層活動史は次のようにまとめられる.粗粒黒雲母花崗岩貫入後に鬼首-湯択マイロナイト帯は片側約600mほどのNNW-SSE方向の延性剪断帯として形成,その後,塊状トーナル岩貫入後に小規模なカタクレーサイト化作用が鬼首-湯沢マイロナイト帯の中心から離れて起こり,中新世以降に大森の北にNE-SW方向の高角断層が形成した.鬼首-湯沢マイロナイト帯本体の断層活動は塊状トーナル岩貫入後起こっていないことが明らかになった.寒風沢地域の南東延長部の鳴子ダム周辺の調査では,昨年の調査結果の補足データが得られた.麓沢での予察的な調査では,この地域でも大森地域同様に鬼首-湯沢マイロナイト帯の断層帯中心付近とその西側が露出していることが推定される結果が得られた.麓沢の調査については,寒風沢や大森地域の断層岩との比較のためにさらに今後詳細な調査が必要である. 軟弱試料や断層粘土を加工するための断層岩試料作成設備の整備が平成9年度に行なうことができたので,本年度は(鬼首-湯沢マイロナイト帯の断層粘土がなかったため)実際に破砕の著しい試料や別の断層の粘土を使って軟弱な試料の観察試料の加工を行い,いくつかの軟弱試料については,試料加工方法のめどが立った. 研究分担者の川邊は,花ノ木断層で断層運動に伴って発達する堆積相について記載し,鴫本は,昨年に引き続き,断層の力学的性質を明らかにするために回転式高速剪断摩擦試験機と高温摩擦二軸試験機によって,摩擦強度などの力学的データや,岩塩剪断帯を用いたリソスフェアの強度断面の実験データの収集を行った.
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