平成9年度は、シーケンス層序学でbasin floor fanならびにslope fanとして認定される海底扇状地推積物の特徴とその時空関係を検討した。さらに、これら2種類の海底扇状地推積物とlowstand wedgeとして認定される推積物の時空関係についても検討を加えた。主な検討対象は、房総半島中央部に広く発達する中新統〜鮮新統の三浦層群ならびに鮮新統〜更新統の上総層群である。 シーケンスモデルに基づくと、海底扇状地推積物は主に相対的海水準の低下期から最低海水準期(低海水準期)に形成され、basin floor fan推積物の上位にslope fan推積物が重なると考えられている。一般に、basin floor fan推積物はシート状のタ-ビダイト砂岩を特徴とするのに対し、slope fan推積物は流路推積物と氾濫推積物の組み合わせで特徴づけられる。これら2種類の推積物の時空変化を火山灰鍵層の対比に基づいて検討した結果、basin floor fan推積物とslope fan推積物はほぼ同時期に形成されていることが明らかとなった。さらに、従来のシーケンスモデルでは、slope fan推積物の形成の後、lowstand wedge推積物が広く海底扇状地推積物に重なると考えられている。一般に、lowstand wedge推積物は、斜面〜陸棚推積システムや陸棚外縁三角州推積システムのプログラデーションによって形成されるが、このプログラデーションの発達がbasin floor fanやslope fanの形成とほぼ同時期に行われていることも今年度の研究によって明らかとなってきた。すなわち、低海水準期に形成されるこれら3種類の推積システムは、地形的な変化に対応した推積物供給量や推積盆の沈降量の空間的変化に対応してほぼ同時期に形成される推積システムであることが明らかとなった。
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