海底扇状地モデルを再検討するさい、特に以下の2つの点が検討課題として重要である。第1番目は、従来より海底扇状地を構成する基本要素と考えられている流路-氾濫堆積システムとシート状タービダイトシステムの時空分布の特徴を明らかにすること、第2番目はシーケンス層序学的に解釈されてきたbasin floor fanとslope fanの相互関係を明らかにすることである。今回の研究ではこれら2つの課題点に注目して、海底扇状地堆積物の詳しい露頭観察を中心とした調査・研究を行った。その結果、(1)流路-氾濫堆積システムとシート状タービダイトシステムが海底扇状地の上流部から下流部にかけて同時に形成される堆積システムとして捉えることができること、(2)流路-氾濫堆積システムの堆積中心の移動が海底扇状地を広く覆って発達する場合のあるシート状タービダイトシステムの形成の直後に行われること、(3)このような海底扇状地を広く覆って発達するシート状タービダイトシステムの形成には、上流部でのavulsionやsheet floodなどの発生が大きな役割を担っていた可能性が考えられること、ならびに(4)上記の検討結果から、従来シーケンスモデルで考えられていたように、シート状タービダイトシステムを特徴とするbasin floor fanが流路-氾濫堆積システムを特徴とするslope fanよりも早く形成されるのではなく、これら2つのタイプの海底扇状地がほぼ同時期に形成される場合のあることが明らかとなった。このような基礎的な研究成果により、今後、世界の多数の海底扇状地堆積物から得られている研究成果の再検討と比較検討より、新たな海底扇状地モデルの構築が可能になると期待される。
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