研究概要 |
北海道西北部,日本海沿岸の浜益地域に分布する岩老層の玄武岩類と安山岩類は,3.7〜3.8Maの比較的短期間に1つの火山から噴出したものである.これらの火山岩類の成因を明らかにするために,斑晶鉱物の化学組成,全岩の主要元素組成及び微量元素組成,全岩のSr及びNd同位体比などの検討を行った結果,以下の点が明らかになった. 1.玄武岩類と安山岩類は類似の非平衡な斑晶鉱物の組合せをもつ(Mgに富むカンラン石+Mgに富む単斜輝石+Mgに乏しい斜方輝石+普通角閃石+Caに富む斜長石+Caに乏しい斜長石+石英+Fe-Ti酸化物). 2.玄武岩類の組成変化は,Mgに富むカンラン石,Mgに富む単斜輝石及びCaに富む斜長石を斑晶として含むより苦鉄質な玄武岩質マグマと,Mgに乏しい斜方輝石,普通角閃石,Caに乏しい斜長石,石英及びFe-Ti酸化物を斑晶として含むデイサイト質マグマの混合によって生じた混合マグマ(玄武岩質)のある程度の分化作用によって説明される. 3.安山岩類の組成変化は,上記と同じ斑晶組合せをもつ玄武岩質マグマとデイサイト質マグマの混合比の違いによって説明される. 4.マグマ混合は,火山体直下の,上部がデイサイト質マグマ,下部が玄武岩質マグマからなる成層したマグマ溜まりから,両マグマが火道を上昇中に起こったものと推定される. 5.岩老層(千島海溝の軸部から約400km離れている)とほぼ同時期に形成された北海道東北部の置戸地域の火山岩類(千島海溝の軸部から約300km離れている)の全岩の化学組成を比較した結果,岩老層の火山岩類よりも置戸地域の火山岩類の方が,LIL元素量に乏しいことが明かとなった.この事実は,北部北海道の鮮新世の火山活動が,太平洋プレートの沈み込みに関連して起こったものであることを示唆している.
|