研究概要 |
本科学研究費によって,北部北海道の遠軽地域(オホーツク海側)と浜益地域(日本海側)の第三紀火山岩の成因が明らかにされた.その概要は以下に示すとおりである. 1.北部北海道オホーツク海側の遠軽地域には,7-9Maの火山活動によって形成された大量の玄武岩(留岡玄武岩;TM玄武岩,千代田―隠沢玄武岩; CK玄武岩)と流紋岩(若松流紋岩;WK流紋岩)及び少量の安山岩(栄野安山岩;SK安山岩)を産する.玄武岩類はBABBに似た地球化学的特徴を有している.CK玄武岩,SK安山岩,WK流紋岩は主要・微量元素組成の特徴から,それぞれ2つのタイプに区分される.WKタイプI流紋岩は,著しくエンリッチしたSrI・NbI値をもつことから下部地殻物質の部分溶融によって形成され,SKタイプI安山岩はCKタイプI玄武岩質マグマとWKタイプI流紋岩質マグマの混合によって形成された可能性が強い.一方,SKタイプII安山岩とWKタイプII流紋岩は,CKタイプII)玄武岩質マグマからの結晶分化作用によって形成されたものである.本地域の玄武岩質マグマは,千島海盆の拡大に伴って上昇したとみられるアセノスフェアに由来していると推定された.玄武岩質マグマの添加により,下部地殻が部分溶融して流紋岩質マグマが生成され,さらに両マグマの混合によって安山岩が形成されたことを議論した. 2.北海道西北部,日本海沿岸の浜益地域に分布する岩老層の玄武岩類と安山岩類は,3.7〜3.8Maの比較的短期間に1つの火山から噴出したものである.玄武岩類の組成変化は,Mgに富むカンラン石,Mgに富む単斜輝石及びCaに富む斜長石を斑晶として含むより苦鉄質な玄武岩質マグマと,Mgに乏しい斜方輝石,普通角閃石,Caに乏しい斜長石,石英及びFe-Ti酸化物を斑晶として含むデイサイト質マグマの混合によって生じた混合マグマ(玄武岩質)のある程度の分化作用によって説明され,安山岩類の組成変化は,上記と同じ斑晶組合せをもつ玄武岩質マグマとデイサイト質マグマの混合比の違いによって説明される.マグマ混合は,火山体直下の,上部がデイサイト質マグマ,下部が玄武岩質マグマからなる成層したマグマ溜まりから,両マグマが火道を上昇中に起こったものと推定される.これらのマグマの活動は太平洋プレートの沈み込みに関連して起こったものであることを述べた.
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