研究概要 |
本年度は,日高変成帯およびその延長方向・領家変成帯・肥後変成帯・宇奈月変成帯において,変成度・形成深度・形成時期の異なる断層岩の調査を行い,マイロナイト・カタクラサイト・シュードタキライトの標本を採集した.そして,上記各変成帯の共通点として,変成帯上昇期(温度下降期)にマイロナイト化作用が広域的に起こり,その後さらに温度が下降した段階で局所的にシュードタキライトやカタクラサイト・断層ガウジが形成されたことが明らかとなった.これらの点は,断層形態の現れ方が温度によって強く支配されている可能性を示す.また,日高変成帯におけるグラニュライト相〜角閃岩相マイロナイトの一部には,浅部断層岩に特徴的なランダムファブリックを持った後,延性変形により面構造を持つに至ったと考えられる断層岩が見出されている.さらに,宇奈月変成帯では,角閃岩相変成場において,ランダムファブリックを持つカタクラサイトがその後のマイロナイト化作用によりウルトラマイロナイトに変化する様子が追跡されている.地殻深部におけるこれら無構造断層岩の形成について,歪速度やfluidの効果を考える必要がある. また,東北日本において花崗岩起源断層岩の概査を行い,カタクラサイト・断層ガウジ標本を採集した.その結果,東北日本西縁部(新潟県中部〜山形県南部)において,カタクラサイト・断層ガウジ・foliatedカタクラサイト・foliated断層ガウジの集中帯の存在が明らかとなった.本集中帯はNNE-SSW方向の活断層帯(新発田-小出線相当)にほぼ平行で,白亜紀最末期〜新第三紀にかけて形成されたと考えられ,東北日本西縁断層帯(鶴岡-小出線)と命名された.現在の東北日本西部における地震活動は,過去に形成された東北日本西縁断層帯関連の断層の再活動であると位置付けられる可能性がある.上記成果は,1997年度日本地質学会において発表された.
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