野外における地殻物質変形の延性-脆性遷移に関する研究

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09640542
• 研究機関: 新潟大学
• 研究代表者: 豊島 剛志 新潟大学, 大学院・自然科学研究科, 助教授 (10227655)
• 研究分担者: 小林 健太 新潟大学, 大学院・自然科学研究科, 助手 (30283005)
• キーワード: 高温マイロナイト / シュードタキライト / 面状カタクラサイト / 延性-脆性遷移 / 地震 / 温度低下 / fluidの効果 / 変形様式

研究概要

本年度は、地殻深部変形岩として、日高変成帯、宇奈月変成帯において、マイロナイト・シュードタキライトを採集した。特に日高変成帯では斑れい岩起源グラニュライト相マイロナイト中に斑れい岩起源のシュードタキライト様岩石を見出した。野外・顕微鏡下での観察の結果、このシュードタキライトは斑れい岩マイロナイト同様、高温条件にて形成されたと判断される。このことは、高温(約800℃)でも延性-脆性遷移が起こりうることを示す。また、ほぼ同様の結論が東南極ナピア岩体トナー島から採取された試料の解析結果からも得られた。これらの例は、延性-脆性遷移を起こす要因として、温度変化ではなく、歪速度の変化やfluidの結果、組織の変化などが重要であることを示唆している。さらに、日高変成帯で上記斑れい岩マイロナイトの構造を切って貫入している、厚さ1cm以下のトーナル岩岩脈起源強マイロナイト化帯を見出した。この岩脈のマイロナイト化は周囲の斑れい岩にも影響を与え、輝石の角閃石化を伴っている。岩脈貫入に伴う破断形成(脆性変形)とそれに続くマイロナイト化作用(延性変形)は脆性-延性遷移が起こったことを示す。この場合、輝石の角閃石化からみて、fluid量の変化によって遷移がもたらされたと考えられる。
また、地殻浅部変形岩として、新潟県五頭山塊西部・蒲萄山塊西部の花崗岩起源脆性断層岩類の構造・組織の解析、新潟県上越市および北海道亀田郡の堆積岩類の変形様式に関する調査、さらに新潟県長岡市東部に小林が見出した活断層露頭の調査を行った。花崗岩起源断層岩類の解析からは、面状カタクレーサイトに続いて無構造〜弱面状カタクレーサイトが形成されたこと、断層の進化に伴い変形メカニズムが変化することを明らかにした。堆積岩類の解析から、砂と泥の流動のしやすさがある深度で逆転すること、温度低下とともに延性-脆性遷移が起こることを明らかにした。

研究成果

• [文献書誌] 豊島剛志: "Gabbro mylonite developed along a crustal-scale decollement"Fault-related Rocks: A Photographic Atlas. -. 426-427 (1998)
• [文献書誌] 豊島剛志: "Tonalite mylonite formed during crustal exhumation"Fault-related Rocks: A Photographic Atlas. -. 518-519 (1998)
• [文献書誌] 豊島剛志: "Deformation of ultrahigh-temperature metamorphic rocks from Tonagh Island in the Napier Complex, East Antarctica"Polar Geoscience. 12. 29-48 (1999)
• [文献書誌] 小山内康人: "Geology of ultrahigh-temperature metamorphic rocks from Tonagh Island in the Napier Complex, East Antarctica"Polar Geoscience. 12. 1-28 (1999)
• [文献書誌] 角替敏昭: "Metamorphic reactions and preliminary P-T estimates of ultrahigh-temperature mafic granulite from Tonagh Island in the Napier Complex"Polar Geoscience. 12. 71-86 (1999)
• [文献書誌] 三浦路子: "北海道イドンナップ帯南部に分布する冬島変成岩類の岩石学的構成と変形変成史"地質学論集. 105. 83-102 (1999)
• [文献書誌] 早坂康隆: "西南日本の地震基板の地質学的特性"月刊地球. 22・1. 7-12 (2000)
• [文献書誌] 小坂和夫: "カタログ:日本の断層と断層岩"日本大学文理学部自然科学研究所. 162 (1998)