研究概要 |
天然の下部〜上部地殻岩石・地層(日高変成帯・東南局ナピア岩体・宇奈月変成帯・領家変成帯・肥後変成帯・蒲萄山塊花崗岩・五頭花崗岩・ジュラ系戸井層・上越市西方の新第三系・活断層地域など)において,変形史,変形作用,変形様式の変化や延性―脆性遷移を引き起こす要因などを検討した.日高変成帯では,斑れい岩起源グラニュライト相マイロナイト中に,グラニュライト相条件で形成された,斑れい岩起源のシュードタキライト様岩石・トーナル岩細脈起源強マイロナイト化帯を見出した.これらの存在は,高温条件(下部地殻条件)においても,歪速度の増加やfluid・マグマの流入により,一時的に脆性変形が起こり,地震性断層が活動し得ることを示している.東南極ナピア岩体トナー島変成岩では,その上昇期に組織の改変,歪速度の増加によって,グラニュライト相条件下で地震性の脆性変形作用と延性変形作用が交互に起こったことを示した.また,上記各変成帯の共通点として,断層形態の現れ方・形成される断層岩の種類が温度によって強く支配されていることを示した.さらに,蒲萄山塊花崗岩・五頭花崗岩では,脆性断層岩類が面状カタクレーサイト,無構造〜弱面状カタクレーサイト,面構造の発達するウルトラカタクレーサイトの順で進化することを明らかにした.そして,地殻上部の脆性領域では変形メカニズムが細粒化に伴い破砕・破断から摩耗・研磨に変化することを見出した.さらに,蒲萄山塊花崗岩では,断層発生期に形成される面状カタクレーサイトには組織的に異なる2種類があることを見出した.一方はシュードタキライトを伴うことから地震性の断層運動により発生し,他方は異種鉱物粒界を乱さないことからクリープ的な変形により発生した可能性を示した.堆積岩類の解析から,砂と泥の流動のしやすさがある深度で逆転すること,温度変化とともに延性―脆性遷移が起こることを明らかにした.
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