研究概要 |
五助橋断層は神戸大学キャンパス付近から六甲山地東部を北東方向に延び,宝塚市まで達する全長約14kmの断層で,六甲山地東斜面の階段状断層地形をつり上げた主要断層の1つとして注目される。神戸大学キャンパス付近から住吉川までの区間の断層沿いに,大月・五助橋断層と直交または斜交する河谷が系統的に右横ずれ方向に屈曲している変位地形が認められる。これらの河谷の屈曲量は屈曲点より上流の長いものほど大きいことから,断層変位の累積によるものと考えられる。 また,屈曲した河谷と断層との交叉する地点で,完新世の段丘・扇状地堆積層および崖錐堆積物を切った多くの断層露頭が確認されている。明瞭な断層鞍部および河谷の屈曲地形を示す住吉山手九丁目北方の谷では,砂防ダム工事にともない,花崗岩に断層ガウジを含む幅20m以上の断層破砕帯とそれを覆って分布する崖錐・扇状地堆積層の一部を切った断層が現れた。^<14>C年代測定により,露頭で確認された断層は500〜700y.B.P.前に堆積した地層を切っていることから,五助橋断層の最新活動は,京都-神戸周辺に大きい被害を与えた1596年慶弔伏見地震に対応する可能性が大きいと考えられる。この露頭と同じ場所およびその20m下流の地点で合計3つのトレンチ発掘調査を行った。上記露頭でのトレンチの壁面では,露頭に現れた500〜700y.B.P.前に堆積した地層を切る断層が確認された。このトレンチの壁面の下部では,500〜700y.B.P.以前に堆積した地層を切っていない断層も認められる。これは1596慶長伏見地震の前に1回のイベントがあったことを示している。変位センスおよび水平変位量を求めるために,断層を横切った水平面の掘削も行った。扇状地堆積層および基盤花崗岩の右横ずれ変位がこのトレンチで確認された。 地震イベントと活動周期については,断層で切られた地層とそれを覆う地層との関係から,五助橋断層沿いに1596年慶弔伏見地震を含めて少なくとも3回のイベントがあったことと,活動周期は1,200年と推定される。
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