研究概要 |
平成10年度科学研究費補助金により行った研究の主な研究結果は以下の通りです。 1) 野島断層沿いの断層岩の調査解析および断層解剖計画によるボーリングコアに見られる断層岩の組織構造と形成メカニズムの研究を行った。六甲-淡路断層帯沿いに産出するS-Cカタクレーサイトは,地下5-10キロの脆性変形領域で黒雲母の塑性変形により形成されたことと,上部地殻の地震発生層の断層せん断帯のレオロジーはカタクレーサイトのS-C構造により制約される可能性が大きいことが示されました,また,六甲-淡路断層帯が第三紀後期活動し始まってから第四紀後期にかけてずっと同じ応力場での右横ずれ成分を持つ逆断層として活動してきたことが明らかにされました。 2) 六甲山南東縁部の芦屋断層帯の地形・地質調査・^<14>C年代の測定および花粉分析の結果,芦屋断層帯は最近の3万年以降に少なくとも5-9回以上の地震断層運動イベントがあったことと,第四紀後期に活発に活動している活断層であることが明らかとなった. 3) 五助橋断層および大月断層に沿っては連続した低断層崖や鞍部列とともに明瞭な水系の屈曲現象が認められ,さらに規模の大きな河川ほど屈曲量の大きい傾向が認められる.また,水系の屈曲量と屈曲点より上流の長さの関係から両断層とも約1mm/yr以上の平均変位速度が得られ,トレンチ調査などから得られた値とも調和的である.地質調査の結果,これらの断層の両側に分布している基盤岩である丹波堆積岩コンプレックス,有馬層群,花崗斑岩のいずれも両断層により変位しており,それらの右横ずれ変位量は,五助橋断層で1.9〜2.2krn,大月断層で0.2〜0.4kmであることが示された.断層岩と断層沿いの基盤岩の変位量などから,五助橋断層の起源は少なくとも第三紀後期まで遡ることができる,一方,大月断層は累積変位地形から求めた変位量と基盤岩変位量とがほぼ等しいことから第四紀中〜後期に活動を開始したものと考えられる.
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