研究概要 |
本年度は西南日本内帯の白亜紀,古第三紀,新第三紀火山岩類および貫入岩類,および外帯の新第三紀火山岩類についての岩石化学的研究を行った.また,関連した研究として,韓半島の古第三紀花崗岩類についての岩石化学的研究も行い,多くの成果を得た.今年度の主な成果は下記のとおりである. 1,従来西南日本の白亜紀火成活動は領家帯から山陰帯まで,幅広く行われ,古第三紀には活動が山陰帯のみに縮少したとの見解が支持されてきたが,山陰帯の白亜紀火山岩類とされてきたものは,白亜紀最末期の活動であることが明確になりつつあり,活動の場が南から北に移動した可能性が強くなった. 2,西南日本および韓半島慶尚盆地の古第三紀火成活動は,西南日本山陰側および慶尚盆地南東部に限られ,白亜紀火成活動の場とは大きく異なっている. 3,新第三紀の火成活動はさらに日本海側に収束し,島根半島の新第三紀火成岩類は塩基性-酸性岩類を通して,白亜紀-古第三紀火成岩類に比べて,よりdepleteした性質を示す. 4,新第三紀末期に活動したアルカリ岩類(隠岐島前)の年代を明確にし,それらは少なくとも2つ以上のマントルマグマソースからもたらされたと考えられる. 5,外帯の新第三紀火成岩類のうち,早期に活動した流紋岩類はその後に活動した塩基性岩類より,同位体的にかなりenrichした性質を示しており,成因を異にする可能性が強い. 6,隠岐島前のアルカリ火山岩類および韓半島と西南日本の古第三紀火成活動との比較検討,および山陰帯における白亜紀火山活動についての成果はすでに論文として公表した.
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