研究概要 |
平成9年度から12年度にわたり,三波川変成岩類の原岩となった地層を特定するために,四国を中心とする三波川変成帯,秩父累帯ジュラ系および四万十帯白亜系の地質,ならびにこれらの地帯の砂質岩・泥質岩の岩石学・地球化学について研究をすすめてきた.この研究過程で明らかになった主な結論は,以下のとおりである. 1.秩父累帯の砂岩は,ジュラ紀の前期と後期で岩石学的・地球化学的特徴を異にする.前期ジュラ紀の砂岩は珪長質火山岩片に富むが,後期ジュラ紀の砂岩は岩片に乏しく,石英質である. 2.四万十帯の白亜紀砂岩は,どの年代においても火山岩片に富むが,チューロニアン・コニアシアン頃を境にして岩石学的・地球化学的な特徴が変化し,年代的に古いKSI(I')と若いKSII(II')とに区分される.この区分は,赤石山地から九州まで適用可能と推定されるが,地域的な変化もあり,四国中央部より西側ではKSI'とKSII'に,東側ではKSIとKSIIに区分される. 3.三波川変成帯を構成する砂質片岩・泥質片岩は,四万十帯を構成する砂岩や頁岩との地球化学的な類縁性が顕著である.このことは,三波川変成岩類の主体が白亜系四万十累層群の深部相であることを示唆している. 4.主に砂質片岩から構成される大歩危ユニットは,岩相的・地球化学的特徴の類似性から四国東部に分布する白亜紀四万十帯の日和佐累層(もしくはその相当層)の深部相であると推定される. 5.四国中央部汗見川地域の砂質片岩・泥質片岩(緑泥石帯)は,地球化学的に北側がKSIIに,南側がKSIに対比される.三波川変成帯におけるこの区分は,汗見ルートでこれまでに報告されている放射年代値の地域的な相違と調和的である. 6.四国西部の変成をうけた秩父累帯北縁部は,地球化学的に一部が斗賀野ユニットに,一部が四万十帯(KSI/I')に対比される.
|