活断層の形成場所が基盤地質構造に規制されているかどうかを検証するために、中央構造線活断層系と領家変成帯の断層構造の関連を中心に、次の2つの側面から調査解析を行った.1)基盤変成岩層に見られる古い断層と新しい断層の幾何学的関係、2)地表における活断層と古い断層の幾何学的関係. 1. 八幡浜大島変成岩体、中部日本和田一水窪地域領家変成岩層は構造的に上昇した地殻深部岩石体であり、延性的剪断、半延性剪断、脆性剪断を重複して受けている.延性は基本的には変成岩の初生的片理面(層面片理)に平行に形成されるが、半延性的剪断面はしばしば高角に斜交する.脆性剪断面は延性的剪断面に平行もしくは高角な鋭利な切断面として形成される.高角切断面は平行な切断面の派生面であることが多い.したがって、地殻深部から構造的に上昇する地質体のように応力場が変わらない場合には、新しい剪断面は常に先行する剪断面を力学的に弱い面として再動させる.応力場が途中で変わる場合には斜交関係が生じる. 2. 中央構造線活断層系は古い時代の衝上等層(領家変成帯と三波川変成帯ないし秩父帯との地質境界断層)の再動かどうかの議論がある.これを検討するために、和田一水窪地域および四国松山南部の調査解析を行った.前者は領家変成岩層が直接秩父帯と接する地域で、領家帯の延性的衝上断層は10〜30度NWで低角であるのに対し、活断層系はほぼ垂直であり、幾何学的には両者は全く別系統である.後者の地域では和泉層群が三波川帯に接するところで、活断層は地質境界断層の屈曲部で合流すると言われていた.活断層を追跡した結果、両者が合流することはないことが判明した.
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