地表で見られる活断層は、5〜20km下の地殻内で発生する破壊面が地表に現れた面であるが、基盤地質構造が活断層と全く関係がないのか、地表の地質構造、その歴史的形成過程の解析からは活断層の位置を説明できないのか、を検討するため、研究の対象を主として中央構造線活断層系にしぼり、活断層と領家変成帯の衝上断層との構造的関係を開明することを目的とし、1)八幡浜大島変成岩体の塑性〜脆性断層、2)領家変成帯和田ー水窪地域の塑性〜脆性断層、3)中央構造線活断層系川上断層と地質境界衝上断層を調査研究した. 1) 八幡浜大島変成岩体には震源断層が発達する.この岩体には塑性断層も発達しており、両者の幾何学的関係、時間的関係と条件の解析を行った.新しい断層は応力場が変わらない限り、それ以前に形成された弱線(すなわち古い断層)を‘利用'すること、とくに、脆性領域の断層の場合にはこの傾向が強いく、地震の震源領域である半延性領域においても、基本的にはこの一般則があてはまること、しかし、応力場が変化した場合にはこの一般則は成り立たないが明らかになった. 2) 領家変成岩層の塑性断層帯は上伊那ー下伊那地域において、中央構造線活断層系と接する部分で発達しているので、後者は前者を弱線として形成されたという説があるが、両者の断層の姿勢・運動センスは別であり、明らかに応力場が異なる.従って、活断層は基盤の断層とは関係がない. 3) 上の結論を検証するために、川上断層と比較的新しい基盤断層の関係について検討した結果、2)の結果と同じように両者は関係ないことが明らかになった.
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