研究概要 |
中国-朝鮮地塊(中朝古陸)に世界最古の岩石の一つ(38億年)が見つかっているが,国交が無い関係で隣接する朝鮮半島北部の地質情報は極端に少ない.今まで露頭で発見されている朝鮮半島の最古の岩石は29億年前の岩石である。朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)のHuichon・香山・南浦・開城の4地域で太古代の片麻岩を採取し,これより古い年代の岩石が発見される可能性が高いと予想し,全岩と分離した鉱物の同位体年代測定(Rb-Sr法,Sm-Nd法)をした.Huichon地域では変成年代として18億年(摩天嶺運動に相当),モデル年代として25〜26億年(狼林運動に相当)が得られた.京畿マッシフの試料で全岩アイソクロン法と鉱物-全岩アイソクロン法で年代を出したところ,Sm-Nd法の年代値として33億年前,35億年前という今まで朝鮮半島で報告されている年代値よりはるかに古い年代値をもつ岩石が発見された. North China blockは,38億年以上の年代をもつ太古代の変成基盤で構成され、South China blockにも38億年の変成基盤岩が推定されている.North China BlockとSouth China Blockは,朝鮮半島に伸びると思われる秦嶺-大別-山東suture-zoneにより南北の2地塊に別けられる。このsuture zone山東半島から朝鮮半島のどこに延長されるのかという問題は,今回の測定で朝鮮半島の開城の南部の京畿マッシフから30億年をこえる年代測定値が得られたことから,朝鮮半島のかなり南部まで広範囲に太古代の地殻が分布していた可能性が生じ、Imjinggang beltが秦嶺-大別-山東suture zoneの東部の延長であるかどうかという問題は年代値のみだけではなく、地質を総合しないと解けないことがわかった.
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