研究概要 |
微少量火山灰に対する分析手法を確立するため,ICP-MS,EPMA,INAAにより,代表的広域テフラ,Aso4,Ah,AT,及び北海道の樽前Aを試料として検討した.また,南極雪氷中の微粒子を対象としてその分析手法の検討を行った.これらの結果,微少量粒子を対象とする分析法の流れを確立することができ,その分析結果から南極雪氷中の微粒子について予想された現実の噴出物とよく対応すること等が明らかになった.主な結果をまとめると以下の通りである。 a.Aso4,AT,Ah,標準ガラスについて,ICP-MS,EPMA,INAAによる主成分・微量成分元素分析を行い,既知のデータとの比較を行った. b.上記のテフラ粒子を細かく砕き,30ミクロン以下の細粒子とした上で,EPMA(EDS)により主成分化学組成を,ICP-MSにより微量成分化学組成を求めた.これらの結果をEPMA,放射化分析による既測定値と比較した. 以上のa.,b.により,ICP-MS,EPMA,INAAの組み合わせによる分析の流れが微細で微量のテフラに対し有効であることが判明した. c.北海道十勝岳山麓の火山灰薄層について,各所で得た試料と樽前火山のTa-a降下軽石をEPMAによる化学組成,屈折率,SEM像を用いて比較した.特に化学組成については火山ガラス及び斜長石共によく一致した. d.南極の雪氷コア試料中に微少粒子を対象に,クラカトア,タンボラ,ピナツボ等の火山噴出物との対応を検討した.氷床コアの予想年代の対応層準から抽出された5〜10ミクロンの微小粒子を対象として,形態(SEM像)から火山ガラスを選び出し,EPMA(EDS),ICP-MSによる化学分析を行った.同時に年代から予想される噴火の噴出物を入手し,同様の手法で合わせて分析を行った.その結果,主成分元素組成の上で,上記火山の噴火を確認する事ができた.表層の雪から抽出された微小火山灰はピナツボ1991年噴火のものと一致した.
|