研究概要 |
1997年度は,研究代表者である高木が,当初予定していた熊本県肥後帯の花崗岩類についてCHIME年代測定用にモナザイトの抽出を試みたが,それが含まれておらず,CHIME年代測定は諦めざるを得なかった.そこで予定を変更し,大分市南方の大野川層群中の花崗岩礫について,その岩石学的諸性質を明らかにするとともに鉱物分離を行い,4岩石試料についてK-Ar年代を決定した.また,併せて四国西部三波川帯にナップをなす唐崎マイロナイト中の角閃石についても,同様にK-Ar年代測定を行った.その結果,下記のことが明らかとなった. 1.大野川層群霊山層中の花崗岩礫はチタン鉄鉱系列の花崗岩に属し,ト-ナル岩,花崗閃緑岩,花崗岩に属する.組成的には,Srの量が350ppm前後と比較的高く,Y-Nb図,Rb-(Y+Nb)図においては,火山弧起源のテクトニックセッティングを示す. 2.K-Ar年代は,角閃石4試料,黒雲母1試料ともよく一致し,103〜108Maの値が得られた. 3.岩石学的性質と年代値だけからみると,この花崗岩礫の供給源として,領家帯と肥後帯(古領家帯)のどちらかを限定することは難しく,1998年度はさらに隣接した領家帯の花崗岩類についても詳しく検討する. 4.唐崎マイロナイト中の角閃石のK-Ar年代は119Maと122Maとなり,大島変成岩や寄居変成岩などの古領家帯のメンバーの年代と一致する結果が得られた. 1998年度は,1997年度に引き続きすでに分担研究者(鈴木)によって試料が採取されている肥後変成岩類のCHIME年代を決定するとともに,古領家帯構成要素と考えられる熊本県御船町のペルム系水越層中の花崗岩礫の年代測定を実施する予定である.また,上記の結果は随時論文として発表する予定である.
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