研究概要 |
平成9年度は7月末より8月中旬まで約3週間にわたりアルタイ山地のカンブリア紀のザスーリン層,シャシクナ-ル層などの地質調査を実施し多量の珪質岩サンプルを採集し、一部の岩石サンプルのフッ化水素酸処理をおこない、微化石抽出をおこなった。これまでの予察的な研究結果、北部アルタイ山地のザスーリン層の珪質岩からはカンブリア紀後期-オルドビス紀早期の放散虫、コノドントが得られ、研究成果の一部は既にRussian Geology and Geophysicsに公表した。南部アルタイ山地のチュレクタシュ層のチャートからはカンブリア紀中期-後期の海綿骨針化石が見い出され、この研究結果については現在Russian Geology and Geophysicsに投稿中である。さらに北部アルタイのカンブリア紀前期のシャシクナ-ル層の珪質泥岩から放散虫、珪質海綿骨針化石、コノドント様化石が随伴して見い出され、今年度は十分な調査の時間的余裕がなかったが、シャシクナ-ル層の珪質岩サンプルを採集することに尽力した。これらの岩石サンプルの一部から極めて保存のよい放散虫化石および珪質海綿骨針化石、コノドント様化石を回収することに成功しており、目下、それら微化石の抽出と観察、詳細な検討をおこないつつある。シャシクナ-ル層の放散虫化石は世界で最古の真正放散虫化石群集であり、これまで未発見の新しい種属である。さらに、シャシクナ-ル層からはこれまで知られていない珪質海綿が多数得られた。随伴するコノドント様微化石は欧米のカンブリア紀前期後半の地層から報告されたものに酷似することが判明している。これらの新たに発見された微化石群集についての予察的検討結果の一部については近く学会で発表する予定である。
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