過去5.5億年間における海棲定住型泥食者の生活・行動様式の変遷史を明らかにする目的の一環として、本年度は沖縄県与那国島における現地調査と検討用生痕化石試料の採取、採取試料に対する軟X線分析とXRD分析を行った。なお、高知県佐川地域、宮城県石巻市、そして鹿児島県種子島における野外調査をも当初は予定していたが、与那国島にて極めて良質の試料が得られることが判明したため、本年度は特にこの地域の調査を重視し、他地域のそれは次年度に行うことに変更した。軟X線分析とXRD分析については、本年度の調査にて採取した試料の他に、保管の国内(高知県佐川地域と宮城県石巻地域)および海外試料(米国とニュージーランド)についても検討を同時に行った。 その結果、およそ1億年前の中生代白亜紀後期を境として、長期定住生活が可能となったと判断される化石試料が産出するようになることが明らかとなった。つまり、海棲泥食者の行動様式と生活様式は、この時期を境にして大きく変化した可能性があることが示唆された。現在のところ、古生代と新生代の生痕化石試料は質・量ともに満足できる状況であるが、生活・行動様式が変化した時期と推定される中生代ジュラ紀と白亜紀前期の試料に乏しく、本研究の目的遂行には次年度にこの時代の地層が観察できる宮城県石巻市と高知県佐川周辺における調査が不可欠であることが改めて判明した。
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