研究概要 |
一昨年度および昨年度に実施した石川県金沢市東部〜北東縁部地域ならびに富山県小矢部市南西部地域に分布する下部更新統大桑層の地質調査をさらに発展拡大させ,本年度には石川県北部ならびに南部,および富山県福光市地域に分布する同層ならびに下位層となる高窪層以下の諸層について,5,000〜1万分の1地形図にもとづく地質調査を終了した.これで大桑層の主要分布地域の地質調査はほぼ終了したといえる.これまでの成果に本年度の調査結果をあわせ,金沢市地域から富山県西部地域に分布する大桑層には,青灰色〜暗灰色砂質泥岩・泥質砂岩が卓越し凝灰岩の多数挟在する下部,青灰色細粒砂岩からなり貝化石層ならびに凝灰岩が挟在する中部,そして塊状黄褐色細粒砂岩から構成される上部という岩相区分がほぼ全域にわたって適用されることが明らかとなった.また,同層中への挟在がこれまでに確認された15枚の凝灰岩層に加え,鍵層として有効性はいまだ未確認ではあるが,さらに6枚の凝灰岩の挟在を確認するとともに,下位層である高窪層の地質調査結果とあわせ,これまでに調査を実施したすべての地域で大桑層と高窪層以下の諸層とは緩やかな傾斜不整合関係にあることが明らかとなった.そして,凝灰岩鍵層ならびに不整合面の野外での追跡結果から,金沢市地域に分布する大桑層は,水平方向への岩相変化にきわめて乏しいこと,そして同市北東部では北東―南西方向あるいは北西―南東方向の軸をもつ緩やかな背斜・向斜構造を呈するものの,さらに東には北北東―南南西の軸をもつ向斜構造ならびに同方向で東南東傾斜の衝上断層が存在し,この衝上断層が富山県福光市北西部をへて同県小矢部市南西部にまで達することが判明した.なお,今後は調査区域をさらに南北へと拡大し同様の調査を継続することで,大桑層堆積当時の堆積盆の構造発達史・古環境変遷史を解明する予定である.
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