研究概要 |
肉食恐竜の鋸歯は分類の重要形質の一つに挙げられ、機能、食性、さらには生態学的な側面が議論されることが多い。しかし、一個体内の歯の位置における変異や、個体の成長段階における変異、それぞれの形質の安定性については十分な研究がされているとはいえない。本研究は、トカゲの現生種をもとに、鋸歯・小鈍鋸歯の個体変異、個体発生における変異、そのパターンとプロセスを明らかにすること、さらに古脊椎動物学、鋸歯・小鈍鋸歯の発生の研究に応用できる基礎データを作成することを目的としている。 現生爬虫類の中で、小鈍鋸歯が最も発達しているイグアナIguanaを例に、歯と鋸歯の形態の一個体の顎の各部位での変異を画像と計測値で記載し、その統計学的有意性を検定した。その結果,Iguanaは歯の位置の違いによる変異がほとんど認められず,計測個体においては,変異幅が著しく小さい結果が得られた.さらに肉食恐竜ヴェロキラプトルVelociraptorの下顎の歯における歯冠,鋸歯の大きさを計測した.ヴェロキラプトル亜科は,「前縁の鋸歯の大きさが後縁のそれの半分以下」という共有派生形質を持つが,計測個体では確認できなかった.Varanusで得た変異のデータベースと比較したが,前縁の鋸歯の磨耗のしかたに,共通のパターンが認められるかもしれないことがわかり,次年度,更に分析を進める課題とした.
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