新たに、阿武隈変成帯、花園地域に分布する竹貫変成岩類中のミグマタイトの発達と、その構造の詳細な記載を行った。この地域の竹貫変成岩類は旅人花崗岩体と塙花崗岩体にはさまれて分布する。これまでの研究結果と異なり、西側ほどミグマタイト化が著しいことを明らかにした。特に、砂質〜泥質変成岩ではミグマタイト構造が顕著で、西側ほど粗粒化し、流動構造が明瞭である。砂質ミグマタイト間の貫入関係や回転構造のミグマタイトなど、特異な構造が発見された。これらは、このミグマタイトが50%以上の融解度を有し、極めて流動的になったことを示している。ミグマタイト中には、鏡下でもメルトから結晶化した構造が随所にみられ、メルト中で回転流動しながら結晶化した斜長石も発見された。本地域のミグマタイトの一つの特徴として、メルトの分離濃集が不十分なことが挙げられる。そのため、花崗岩化作用で生じたかのようにみえるミグマタイトがある。これらは、花崗岩と同じ程度に粗粒であるが、砂質〜泥質片麻岩の構造が残存する。しかしリューコゾームの発達がほとんどないため、ミグマタイト構造がない。鏡下ではメルトから結晶化した構造が普遍的であり、部分融解していたことを示している。このような岩石はミグマタイト中からメルトが分離濃集する過程の出発点を示すよい例となる。これらの試料についての岩石化学的研究のための試料作成は終了し、分析を待つばかりになっている。今後は、鉱物学的な研究と合わせて、成果を報告するつもりである。
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