研究概要 |
マグマ中のガス(主にH_2O)が濃集する下部地殻から上部地殻での圧力を推定する方法はあまりない。確かに、ザクロ石や菫青石などの安定領域やこれらを使った地質圧力計からマグマの迸入圧力を決めることができるが、花崗岩などの酸性岩にこれらの鉱物は普遍的に産しない。 最近、花崗岩に産する角閃石のAlが圧力の増加にともない増加し、地質圧力計として経験的に使えるという報告がある(Hammarstrom and Zen 1986,1992,Blundy and Holland 1990,1992,Rutherford and Jonson 1992)。このため大崩山花崗閃緑岩と大隅花崗岩の角閃石の安定領域を決め、温度・圧力の変化に対する角閃石の化学組成変化を詳細に検討し、マグマの発生メカニズムを解明を試みた。 0.1〜0.4GPaの圧力範囲で、南極やまと山脈の閃長岩の相平衡図がほぼ完成した。新しい装置で0.4GPaの実験を行った。閃長岩の角閃石の安定領域は角閃石の分解曲線と固相線が低い圧力でぶつかることによりマグマ迸入場所は0.3GPaより浅いことがわかった。約1kmの深さまであがつてきたマグマが固結した大崩山花崗閃緑岩とそれより多少深かったとする大隅花崗岩の相平衡図を完成た。それに対しカルク・アルカリ岩である大崩山花崗閃緑岩と大隅花崗岩の角閃石の安定領域は広く、0.4GPaより高い圧力でも角閃石が安定であることがわかった。このため角閃石の安定領域から圧力を推定する事ができなかった。また角閃石の化学組成変化は花崗岩類中のものではこれぐらいの圧力の違いではほとんど変化がみられなかった。
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