研究概要 |
科学研究費補助金の交付を受けて,領家変成帯・肥後変成岩・飛騨変成帯・大洗層推積岩などの地質調査を実施し,また,変成岩・花崗岩類・推積岩の岩石記載と蛍光X線による全岩化学組成分析,X線マイクロプローブによる構成鉱物の化学組成分析およびモナザイト・ジルコンのCHIME年代測定を行った。主な成果は以下の通りである。 (1)領家帯の変成時期は約100Ma,最古期花崗岩の貫入は約95Maで,これまでK-Ar年代の違い(西部の柳井地域:約85Ma,中部地方;約65Ma)から考えられてきた変成火成作用の東進説は成立しない。K-Ar年代は最後の花崗岩の貫入に引き続く上昇冷却の時期に対応する。柳井地域の領家変成帯の平均上昇速度は1.5mm/年,中部地方は0.8mm/年である。 (2)肥後変成岩のモナザイトCHIME年代は約120Maに集中する。ジルコンCHIME年代は170〜1600Maの範囲にあり,特に250Ma前後のものが多い。これまでに報告された約250MaというRb-Sr・Sm-Nd年代は原岩形成年代であり,変成作用は白亜紀に生じた。 (3)日本列島の手取層群と韓半島の慶尚層群の砕屑物は共に二畳紀と先カンブリア紀の2種類の後背地から供給された。両者は推積の時代や岩相も類似しており,日本海拡大以前の日本列島と韓半島の基盤岩対比を行う上での重要な制約条件となる。 (4)舞鶴帯三畳紀難波江層群の砕屑モナザイト粒子の年代は下部層(約480Maと250Ma)と上部層(1600〜1750Ma)で大きく異なる。日本列島全体を通じて,古生代の推積岩は約480Maの砕屑粒子を多く含み,中生代以降の推積岩は先カンブリア紀中期の砕屑粒子に富む傾向がある。三畳紀カ-ニアン階に日本列島の後背地が急変したことが明らかになった。
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