研究概要 |
(1)下部マントル主要構成物質のペロブスカイト型(Mg,Fe)SiO_3のアナログ物質である(Na,K)MgF_3ナイボライト固溶体の高温におけるイオン導電機構を明かにした。地磁気測定から見積られる下部マントルの高い電気伝導度の機構は、組成のゆらぎによる共晶反応と局所構造(クラスター化)によるモデルで説明できることを固体イオニクスの国際会議で発表した。(2)下部マントルの伝導機構として、固体結晶におけるイオン伝導の可能性を追求しているが、EXAFS(X線吸収端近傍に現れる構造)法や回折法の非調和熱振動解析より有効二体間ポテンシャル及び有効一粒子ポテンシャルが決定でき、イオンの拡散経路や原子移動の活性化エネルギーについての情報が高い精度で得られることも同国際会議で発表した。(3)鉱物の物理的化学的性質の発現機構を知るために、鉱物の詳細な構造研究と同時に、理論的に電子構造を量子論を用いて計算し、実験との比較を行っている。下部マントルの構成鉱物は、イオン性と共有性の両化学結合様式の混在した状態にある。代表的な二成分系共有結合性の鉱物において、系統的にイオン性増加に伴って非調和熱振動が顕著になり、大きな拡散係数を有するイオン導電特性が現れることをみいだした。これらイオン性の混在した共有結合性の鉱物が、金属結晶やイオン結晶に比べ第一近接原子とたいへん大きな相関のある局所的振動をしていることも明らかにした。(4)熱や圧力誘起相転移など構造変化に伴う二体間ポテンシャルの実際の変化をEXAFS法により実験的に測定した。圧力上昇に伴いポテンシャルは急峻になり、配位数増がを伴う圧力誘起相転移では二体間ポテンシャルはソフトになることを定量的に決定した。現実の二体間ポテンシャルは、相転移に伴い、低圧相と高圧相では異なり、化学結合性の変化に対応したケミカルシフトが観測される。
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