山形県と新潟県の県境に聳える朝日山地は深い山地で、林道等も少なく、アプローチが簡単でない地域である。この山地の南東部、山形県の部分を研究地域と定め、南北3km東西3kmのメッシュを切り、各メッシュから最低1試料を採取した。岩石は花崗閃緑岩である。この試料を粉砕し、重液分離、及び電磁分離を行って黒雲母と角閃石を分離し、試料とした。 Ar-38をスパイクとして用いる従来型のK-Ar年代測定法による年代測定は既に終了した。角閃石試料は岩体の中央部で9000万年程度の年代を示し、周辺部に向けて若くなっている(6500万年程度の年代まで若くなる)比較的「素直な」年代分布を示す。ただ、岩体全体が一度に生じ冷却したのであれば中心部の方が若い年代を示すことが期待されるので、この結果は貫入が中心部から周辺部に向けて何度かあったことを示すものかも知れない。黒雲母年代は1億年程度の年代から5000万年程度の年代までばらつき、分布にも規則性が見られない。ただ、カリウム含有量の変化によらず、若い年代は5000万年程度に限られており、この年代が、この岩体が300℃程度に冷却さてた年代だと考えられる。 黒雲母の年代が共存する角閃石の年代より古い試料がいくつかある。これは一般に受け入れられている傾向とは逆である。また、このような古い年代を示す黒雲母はカリウムが減少するに伴い年代が古くなっている傾向が見られる。このような現象の原因を調べるためAr40・Ar39年代測定法で、更に詳しい年代研究を続けることにし、現在までに黒雲母の分析を終わらせている。角閃石より古い年代を示した黒雲母の捕獲Arの同位体比は大気と有為な差が見られず、捕獲Ar同位体比が大気の値より有為に高いという、いわゆる過剰Arの証拠は見られなかった。角閃石試料に関しては現在中性子照射中である。
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