研究概要 |
沖縄南西諸島の沖永良部島、渡名喜島および宮古島で採取されたサンゴ28試料についてホウ素同位体比の測定を行った。サンゴの種はhelioporaを2種、acroporaを20種、montiporaを2種およびporitesを4種用いた。その約6gの試料からホウ酸メチル蒸留法によりホウ素を単離し、ホウ素同位体比を測定した。また、共存元素をICP発光分光分析法により定量した。その結果、主な共存元素として、Na,K,Li,Mg,Sr,Ba,B等が含まれており、特にSr,Na,Mg,が多く含まれていた。マグネシウムの共存により、カルサイトへ変成を受けたものが存在した。このことは、マグネシウム濃度とC/A比の間に正の相関から推測される。ホウ素濃度あるいは同位体比と、その他の化学成分との間は相関性がなかった。ホウ素濃度は20〜50ppmであり、その平均値は40.95ppmで、標準偏差は±7.23であった。ホウ素同位体比は4.107〜4.158(δ^<11>Bにして15.8〜28.3‰)であり、heliopora種を除いたその他の種26試料中のホウ素同位体比は4.133〜4.158で、その平均値は4.141となった。このときの標準偏差は±0.008であり、非常に狭い範囲のバラツキであった。この値は理論的計算と非常に良い一致を示した。しかし、helioporaとその他のサンゴ種間で共存元素や同位体比などに違いが見られ、heliopora種のサンゴ中のホウ素同位体比はその他4種より低いホウ素同位体比を示した。このことは何らかの生物学的に違った同位体分別の可能性があることを示唆すると考えられる。
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