研究概要 |
環境中のプルトニウム(Pu)-239をトレーサーにした外洋への土壌粒子塵フラックス評価法を確立するために,飛程が長い(すなわち外洋域に到達する)大気浮遊塵の主要な粒径フラクションをまず明らかにするとともに,その粒径フラクションの大気浮遊塵に含まれる土壌粒子成分の見積もりとPu-239の定量を中心とする実験的研究を平成9年度において行った。その概要は以下のとおりである。 (1)アンダーセン式ハイボリウムダストサンプラーを用いて1993年から行ってきた大気浮遊塵の粒径別(5段階)連続採取を継続し,1採取期間を1〜3カ月(大気処理量,2.5万〜7.3万m^3)とする試料6試料を新たに得た。 (2)一方,低圧慣性衝突方式の13段分級ダストサンプラーで3〜5日を1採取期間とする大気浮遊塵を採取して鉛(Pb)-210とポロニウム(Po)-210の定量を行い,Po-210/Pb-210放射能比から大気浮遊塵の平均滞留時間を粒径別に評価した結果,0.30〜0.76μmの粒径フラクションが主要な長飛程大気浮遊塵であることが分かった。 (3)そこで次に,(1)で採取した粒径別大気浮遊塵のうち1.1μm以下の粒径フラクションを長飛程成分とみなして集中的に分析した。鉄の定量値に基づいて土壌粒子塵量を見積もった結果,大気中の長飛程土壌粒子塵の濃度は0.3〜1μg/m^3(平均0.5μg/m^3)で長飛程大気浮遊塵に対する割合は2.6〜7.8w%(平均5.4w%)であることが分かった。さらにPu-239定量値と土壌粒子塵量から長飛程土壌粒子塵中のPu-239濃度を求めた結果0.1mBq/gのレベルであることが分かった。極微量プルトニウム-239定量のための測定を続行中である。 今後さらに2年間,大気浮遊塵の採取と長飛程成分に対する分析を続けて土壌粒子塵中のPu-239濃度の変動幅と変動原因を追究するとともに,外洋表層海水中のPu-239濃度の測定値も増やして,Pu-239をトレーサーとする外洋への土壌粒子塵フラックスの評価法を確立していく予定である。
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