研究概要 |
陸-海洋系の環境試料中の陸源由来バイオマーカーの分子レベル安定炭素同位体比を精度良く測定するための検討を行った。 まず、陸上木質樹木に含まれるリグニン由来のフェノール類分子の炭素同位体比測定について検討した。フェノール類標準試薬9種類および誘導体化試薬(テトラメチルアンモニウム水酸化物,TMAH)数mg程度を石英管中に酸化銅と共に封じ込めて燃焼させ、生じたCO_2を従来法にて安定炭素同位体比の測定を行った。TMAHによってフェノール類分子のメチル化を行い、数マイクロモル程度の炭素同位体比をガスクロマトグラフ燃焼安定同位体比質量分析計(GC/C/IRMS)にて測定した。これを従来法で得られた値と比較し、誘導体化で付加された炭素の同位体比をマスバランスにより計算し、同位体比の補正式を作成した。測定結果は数パ-ミル以内で一致したが、5パ-ミル程度ずれる場合もあった。この原因は検討中であるが、誘導体化時の収率が悪い(最大30%)ことが原因の一つとして挙げられる。今後、収率の改善の必要がある。また、このTMAH熱化学分解法を陸上高等植物の木質部に適用し、リグニンフェノール分子の炭素同位体比を予備的に測定した。 また、長鎖脂肪酸の炭素同位体比測定に関して、しばしば環状脂肪酸(ホパン酸)とガスクロマトグラフ上でピークの重なりを生じ、GC/C/IRMSによる測定を困難にする場合があった。そこで尿素付加の手法を用いて直鎖脂肪酸と環状脂肪酸の相互分離法の開発を行った。その結果、マイクログラム程度の微量脂肪酸でも尿素付加法による分離で、GC/C/IRMS測定が可能になった。この方法を用いて日本海および琵琶湖堆積物中の長鎖および環状脂肪酸の炭素同位体比測定を行った。
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