陸-海洋系の堆積物試料や陸上植物中に存在するバイオマーカーの分子レベル安定炭素同位体組織をガスクロマトグラフ燃焼安定同位体比質量分析計(GC/IRMS)を用いて測定した。まず測定に際する誘導体化法や尿素付加などの分離手法を検討・確立した。対象とした陸源バイオマーカーは陸上植物の表皮に存在するクチンを構成しているクチン酸(ある種のヒドロキシ脂肪酸)や長鎖モノカルボン酸(炭素数20以上)、および木質樹木に含まれるリグニン由来フェノール類分子であった。東シナ海・黄海表層堆積物および日本海コア堆積物(過去約2万年)試料中の長鎖モノカルボン酸の炭素同位体比分布は過去数年間の代表者の研究で明らかとされた太平洋堆積物中のものと同じであった。その同位体組成はこれら海洋堆積物中の長鎖モノカルボン酸が陸上C3植物に由来するするのだはなk、海洋生物または陸上C4植物に起源をもつことが明らかとなった。 しかし、東シナ海・黄海表層堆積物中のクチン酸は陸上C3植物からもたらされたことが炭素同位体比から示唆された。よって、海洋堆積物中の海洋起源の炭素数30くらいまでの長鎖脂肪酸が存在することが再確認された。また、外洋域における炭素数20から30の長鎖脂肪酸の存在量は全有機炭素量と良い正の相関を示し、太平洋や日本海、東シナ海、黄海において一様な値を示すことが明らかとなった。これらの結果は長鎖脂肪酸の存在量が海洋における基礎生産と密接に結ぶついていることを示す。分子レベル炭素同位体組成はバイオマーカーの起源の再評価や陸-海洋系における有機物の運搬過程解析、さらに生態系解析に重要な手段であることが示された。
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