研究概要 |
本研究は,微小宇宙塵試料の多元素分析に適している機器中性子放射化分析(INAA)を高精度で分析できるように,分析法を確立することを第一にする.第二に起源に関する高精度の議論ができるよう,基礎データを蓄積することにある.今年度は主に次の項目を中心に研究を行った. 1.微小宇宙塵試料の迅速取り扱い法の開発 宇宙塵試料のほとんどは,直径100μm以下できわめて小さく,目視することは不可能である.微小物質の化学組成を高感度で分析することができるINAA法は非破壊の分析法である.この方法で化学組成を知った後,岩石・鉱物学的情報,希ガス,同位体組成の情報も同一試料から得ることができる.しかし,INAA法では試料の迅速な取り扱いを必要とすることが多い.ポリエチレンフィルムの小片(3x3mm)等で作った袋に封入し,目視できる状態で取り扱えるようにする方法を考案した.この場合その袋の材料が超高純度であることが要求される.今年度は4種類のポリエチレンフィルムと1種類のテフロンフィルムについて不純物含有量を求めた. 2.深海底堆積物中及び南極雪中宇宙塵の選別 第37次南極越冬隊によりドームFの生活水を作成した水槽底に溜まった沈殿物(>5g)が供給された.この沈殿物を実体顕微鏡下で観察したところ,多数の人工物(繊維,溶接の火花由来の球粒,サビ片等)の混入が観察された.そこで,宇宙線生成核種である^<26>Alの測定で純度をチェックしたところ,^<26>Alは観測されず,きわめて純度が低いことが判明した.これを今年度購入した微粒物質磁気選別装置で宇宙塵を純化する試みを行った. 現在1,2項とも結果の評価を行っている段階である.また標準試料の作成も準備を進めている.
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