研究概要 |
平成10年度には,東海大学海洋科学博物館の地下海水中でのマンガン酸化物の生成・成長過程と海水および堆積物から単離したマンガン酸化細菌を前もって2価のマンガン濃度を約50ppmに調整した滅菌海水試料(地下海水,外洋表層水,外洋深層水,沿岸水,外洋深層水+餌)に添加し,マンガン酸化物の生成過程を検討した。 1997年度および1998年度における東海大学海洋科学博物館地下海水給水系で、マンガン酸化物の生成・成長過程を検討した。その結果、地下海水中に棲息するマンガン酸化細菌は主にPseudomonas sp.であり、それらが最初付着基盤に付着し、その後集菌・集塊した後、溶菌が生じた。しかし、この段階ではまだマンガン酸化物は生成していないことが電子プローブマイクロアナライザ(EPMA)による測定から明らかとなった。マンガン酸化物は、溶菌が生じた後に生成され、その表面形態がハニカム状構造を形成する。さらに、時間経過にともないマンガン酸化物の形態は、ドーナツ状・ドーム状・カリフラワー状などと変化し、それらが積み重なるように方向性をもって成長することが分かった。 室内実験に用いたマンガン酸化細菌は、Pseudomonas sp.およびFlavobacterium sp.である。上記の滅菌海水試料中、マンガン酸化物が生成しなかったのは外洋深層水とそれに餌を添加した試料であった。このことは、マンガン酸化細菌は飢餓状態でないとマンガンを酸化しにくいものと考えられる。マンガン酸化細菌により生成したマンガン酸化物の鉱物は、外洋水ではγ-MnO(OH)であるが、沿岸水および地下海水では10Å manganateが生成した。
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