本年度は適切な隕石資料を調査・入手し、その中に含まれる白色包有物のキャラクタリゼーションを行うとともに、難揮発性親鉄元素の定量法、同位体比測定法の基礎的検討を行った。 CV3タイプの炭素質コンドライトであるAllende隕石は、白色包有物の含有量が多いこと、落下総量が多いため入手が容易であることのため、調査がもっとも進んだ。国立科学博物館所蔵の1.2kgと0.4kgのAllende隕石から直径約1cmの球形の白色包有物がそれぞれ2個と1個発見された。これらの包有物は、光学顕微鏡による観察から、coarse-grained inclusionに分類される。サブタイプはType Bであると考えられるが、compact Type Aの可能性もあり、X線マイクロアナライザーによる鉱物種の同定を行う予定である。一方、国内の研究者より提供されたAllende隕石からは、多数の不定形の白色包有物が見つかった。これらはいずれもfine-grained inclusionに分類される。他の隕石についても少量を入手したが、調査はまだ進んでいない。 同位体比測定法に関しては、Osの測定法の検討が進んだ。国立科学博物館所有のVG54-30表面電離型質量分析計を使用し、Os標準試薬5ngからの負イオン測定は充分な感度が得られた。試料からのOsの濃縮・精製法に関しては、イオン交換樹脂のシングルビード法、蒸留装置の小型化(容積5-10ml)の検討を行った。定量法は、安定同位体希釈法を適用するために濃縮同位体試薬を購入し、スパイク溶液を準備している。年代決定のためにReとOsについては表面電離型質量分析計を用いるが、他の難揮発性親鉄元素については、多元素同時定量の行いやすいICP質量分析計を使用して安定同位体希釈法を適用する方向で検討を進めている。
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