研究概要 |
原始太陽系星雲の環境を推定することを目的としてCV3タイプの炭素質コンドライトであるAllende隕石中に含まれる白色包有物のキャラクタリゼーションを行うとともに、消滅核種の痕跡の探索、難揮発性親鉄元素の定量法及び同位体比測定法の検討を行った。国立科学博物館所蔵の3つのAllende隕石から、直径約1cmの球形の白色包有物などを3個分離し、そのキャラクタリゼーションを行った。いずれもcoarse-grained inclusionであり、X線分析装置付き電子顕微鏡による観察の結果、サブタイプは、メリライトとスピネルからなるtype Aインクルージョンとアノ-サイトが多くtype Cである可能性が高いインクルージョンが1つずつあり、残りの一つはType Bらしいことがわかった。広島大学理学部の二次イオン質量分析計を用いたMgの同位体比測定の結果、このうちTypeCインクルージョン中のアノ-サイトから、消滅核種A1-26に由来する。Mg-26の異常が見られた。また、Hコンドライトの酸による分別溶解フラクションから消滅核種Cs-135の痕跡を見つけた。今後の発展が期待される。難揮発性親鉄元素の定量法については、手法の確立した放射化分析法の他に、多元素同時定量の行いやすいICP質量分析計の使用を検討した。その結果、感度変化に留意すれば、メモリー効果の著しい0s以外の元素に有効であることが分かった。高感度の負熱イオン質量分析法に関しては、ドイツ、マインツ大学Heumann教授との共同研究により、白金族元素およびその他の親鉄元素混合溶液からの負イオンの生成について基礎的な検討を行った。この結果、Ptフィラメントを使った場合、同じ量の元素から生成する不イオン強度はRe,0s,Ir,Ru,Moの順に弱くなることが分かった。W,Moの測定にはReフィラメントを用いる方がよいと思われる。
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