HCP分子のHCP→CHP異性化反応を分光学的に捉えるために、HCP分子の高振動励起状態を分散蛍光法及び誘導放出分光法を用いて観測した。今回観測した振動準位エネルギーとこれまでに報告されている振動準位エネルギーを用いて、変角振動とCP伸縮振動の相互作用からなるポリアッド構造の解析を行った。その結果、これまでに理論研究で予測され、我々が実験で観測していた“異性化"状態と帰属される振動準位も変角とCP伸縮振動のポリアッドのメンバーとして帰属されることがわかった。ポリアッド構造を記述する有効ハミルトニアン行列の固有ベクトルを解析することで“異性化"状態の波動関数は理論研究で予測されていたように同じポリアッド内の他の振動準位の波動関数とは大きく異なる形状であることが明かとなった。理論研究では“異性化"状態の出現がポリアッド構造の破綻かどうかは判断できなかったが、今回の解析は“異性化"状態の出現はポリアッド構造のなかで起こることを明らかにした。 さらに高エネルギー側に存在する“異性化"状態を観測するために、分散蛍光法と誘導放出分光法の励起に赤外-紫外二重共鳴法を用いた高振動励起状態の観測を行った。この方法を用いることでこれまでに観測されていなかったCH伸縮振動の励起した高振動励起状態の観測に初めて成功した。HCP分子の異性化の反応座標はCH結合距離と結合角の変化の両者からなるので、CH伸縮振動の励起した高振動励起状態の解析から異性化反応の理解について新たな情報が得られることが期待される。
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