研究概要 |
本研究においては、全く新しい原理に基づく分子イオンの赤外分光法として、自動イオン化検出赤外分光法の開発を行った。 従来、分子イオンの赤外分光法としては、赤外光強度変化の観測以外に方法が存在しなかった。しかしながら直接吸収法の感度には限界があり、超音速分子線の様な低濃度の系には適用が非常に困難であった。そこで、本研究では、イオンそのものではなく、イオンと同一の分子構造を持つ高リュードベリ状態のイオンコアに着目し、その赤外振動遷移を、振動励起の結果生じる自動イオン化生成イオンの検出により高感度に観測した。 具体的な系としてはフェノールイオンを対象として、方法論の確立を試みた。第一電子励起状態を中間状態とする二波長二重共鳴法を用いて、超音速分線中のフェノール分子を、第一イオン化閾値直下の高リュードベリ状態(主量子数【approximately equal】80)に励起した。差周波発生赤外光をリュードベリ状態にある分子に入射、波長掃引した。赤外波長が、リュードベリ状態のイオンコアの振動遷移に共鳴すると、コアの振動が励起する。その結果、リュードベリ電子のエネルギーとコアの振動エネルギーの総和はイオン化閾値を越え、自動イオン化が起きる。パルス化した電場を赤外光の後に印加し、生成したイオンを捕集することにより、赤外遷移を検出した。これによりフェノールイオンのOH伸縮振動を観測する事 続いて、フルオロフェノールイオンのo-,m-,p-の各異性体のOH伸縮振動の観測を行った。o-異性体のみが大きな低波数シフトを示し、フッ素原子と水酸基の間の分子内水素結合の存在が確認された。これは単分子イオンにおける分子内水素結合の最初の直接観測例である。
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