研究概要 |
本年度はまず小型の超高真空仕様の試料槽を設計・製作した。このための液体窒素冷却試料マニピュレータ・半導体検出器導入機構等を購入した。真空はターボ分子ポンプを主排気とし10^<-10>Torr台の超高真空を得ることができた(排気系は予算範囲におさまらないので現有設備を利用した)。試料は赤外線ヒーターにより700〜1000℃程度までの加熱と液体窒素による冷却ができた。 次に,物質構造科学研究所放射光研究施設(PF)BL11BにおいてKBr(100)単結晶表面上にエピタキシャル成長したKCI薄膜のC1-K吸収端EXAFSの測定を行った。KC1の膜原を2,6,20Åと変化させかつ測定温度をそれぞれ変化させバルクのKC1との局所構造変化を調べた。現在解析中である。 主たる目的である表面融解の実験はPF課題審査委員会において高い評価で採用され,Cu/graphite系について98年4,6月にPF-BL12Cにて行うことが決まっている。現在その準備中である。 理論に関しては,低温における固体の非調和熱振動を記述する量子力学的手法を検討した。従来我々が開発してきた量子統計力学的摂動展開法に基づいたEXAFSキュムラント計算は,分子には有効であるが固体の場合は数値計算が極めて困難であった。今回新たに経路積分有効ポテンシャル法による計算が有用であることを見出した。これを二原子分子Br_2,固体Kr,Niに適用し、実験で得たEXAFSキュムラントと非常によい一致を見た。特に,Niのような金属に対してもembedded atom法と経路積分有効ポテンシャル法を組み合わせることが可能であることを見出した点で,今後の本研究にも有効である。
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