研究概要 |
1 前年度のこはく酸水素アンモニウムの二次の相転移温度以下の低温での結晶構造の研究に引き続き,トランスーグルタコン酸の酸性カリウム塩一水和物(1),ナトリウム塩(2)及びアンモニウム塩(3)の短いO-H...O水素結合の様式を調べた。(1)では結晶学的対称中心をもつ非常に短い水素結合が形成されるのに対して,(2)と(3)では比較的長い非対称な水素結合が形成されることを見出した。(1)では265K付近で二次の相転移が観測されたので,295及び40KでX線回折により結晶構造を詳しく調べた。水分子の関与する水素結合の長さは40Kでは295Kにおけるよりも有意に短くなるのに対して,短い水素結合の長さには両温度で有意な差異が認められなかった。差の電子密度図から,この短い水素結合は両温度で単一極小ポテンシャルをもつことが見出された。 2 前年度タルトロン酸水素アンモニウムにおいて非対称な短いO-H...O水素結合が見出されたのに引き続き,240,150及び20Kでこの化合物の結晶構造を詳しく調べた。温度の低下による水素結合の長さの減少は認められず,差の電子密度図からこの水素結合に関与する水素原子は常に特定の酸素原子と共有結合していることが明らかになった。 3 水素結合を利用した結晶設計の一つの指針となる次のような実験結果を得た。2ーピリドンはジカルボン酸と水素結合性の分子間化合物を作り,その分子種組成及び水素結合様式はジカルボン酸が対称中心をもつか否かに支配されることが明らかになった。
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