電位依存型イオンチャネル活性を示すメリチンをリン脂質二重膜に組み込んだ脂質二重膜が磁場に配向する性質持つことを利用して、膜結合メリチンの構造・配向・運動性に関する詳細な情報を得る実験を試みた。本年度は昨年度と同様に^<13>Cで同位体標識した特定のカルボニル炭素の化学シフト値の異方成分を決定するため、100Hzの低周波数でのマジックアングル回転の実験を行った。この結果、静止状態では磁場に配向するために得られなかった、異方成分を正確に見積もることに成功した。この情報と昨年度に得られている磁場配向に伴う、化学シフト値の情報を組み合わせることにより、膜結合メリチンが形成しているα-ヘリックスのN端は膜面に対して35度の角度で膜中に挿入し、C端は72度の角度で膜中に挿入していることが判明した。また、メリチンの中央部は膜中に埋もれているが、非常に運動性の高いことが判明した。さらに、電位依存型イオンチャネル活性を示すアラメシチンについても膜結合状態での構造解析を行った。アラメシチンはリン脂質二重膜を磁場配向させる性質を持たないため、DMPCとDHPCの混合系であるバイセルを調製し、この膜にアラメシチンを組み込んだ実験を行った。メリチンの場合と同様の磁場配向性能を示したので、磁場配向に伴う化学シフト値の変化と低速マジックアングル回転による化学シフト異方性の測定を行った。この結果を用いてアラメシチンの膜結合構造を解析した結果、アラメシチンは膜面にほぼ垂直にN端から膜中に挿入された構造であることが判明した。本研究で用いた磁場配向膜はイオンチャネルペプチドの膜結合構造の決定に非常に有用であることが判明した。
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