1.オゾン分子のK殻領域(520-560eV)の光吸収スペクトルを測定した。オゾンに関するこのエネルギー領域の測定としては最初である。オゾンの末端酸素原子の1s電子によるπ^★準位への吸収は529.1eVにあり、中心酸素原子のそれは535.4eVであることを明らかにした。これらの吸収帯による光解離過程も測定した。 2.水素化ジメチルアルミニウム(DMAHと略記)からアルミニウム膜を形成する場合、膜内に含まれる炭素含量を減らして良質のアルミニウム薄膜を作ることは大きな課題である。DMAHの価電子領域を励起して膜形成を行うと炭素含量が多いが、アルミニウムの内殻電子を励起して膜形成を行うと、炭素含量は価電子励起に比べて半分以下に押さえられることを明らかにした。すなわち、膜形成における励起位置選択の有用性を示すことが出来た。 3.分子中に酸素と窒素原子を含む芳香族化合物および直鎖状の脂肪族化合物のO(1s)およびN(1s)を、それぞれ、選択的に励起してその分解過程を調べた。芳香族化合物ではベンゼン環が励起位置に無関係に分解するために初期の励起位置メモリーを失うが、脂肪族化合物では明確な位置選択性を観測することが出来た。このような大きな分子におけるK殻励起による反応制御の可能性を見出したのは初めての例であり、来年度は励起状態依存性を詳しく測定し、分子スイッチとしての機能の可能性を検討する。
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