研究課題/領域番号 |
09640619
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 岡崎国立共同研究機構 |
研究代表者 |
井口 洋夫 岡崎国立共同研究機構, 分子科学研究所, 名誉教授 (00100826)
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研究分担者 |
緒方 啓典 岡崎国立共同研究機構, 分子科学研究所, 助手 (10260027)
鈴木 修吾 筑波大学, 物質工学系, 講師 (90241794)
中原 祐典 都城工業高等専門学校, 教授 (80044543)
市村 憲司 熊本大学, 理学部, 教授 (00151481)
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キーワード | 水素 / フラーレン / 超伝導 / ナトリウムドープC_<60> / 三元系化合物 / 粉末X線回折 / リ-トベルト解析 / 相転移 |
研究概要 |
水素を含むナトリウム-C_<60>三元系化合物の試料合成において、超伝導を示すβ-phase(as-prepared β-phaseと呼ぶ)は得られるものの、これとはうらはらに全く超伝導を示さないα-phaseも得られ、サンプル的にはα-phaseの方が圧倒的にできやすい問題点があった。しかし、このα-phaseのサンプルを真空に引きながら300℃で熱処理するとβ-phaseへ変化することを見出した。さらに、この段階で超伝導性が弱い(超伝導体積パーセントが小さい)サンプルでも、水素ガスを導入してその雰囲気にさらしてやると超伝導性が著しく強くなることも見出した。この生き返ったβ-phase(converted β-phaseと呼ぶ)は、as-prepared β-phaseと構造的にも(空間群Fm3mのcubic)、超伝導転移温度(T_c=15K)も同じであることを確認した。粉末X線回折パターンのRietveld解析からNaイオンは八面体サイト(O-site)、四面体サイト(T-site)ともにサイトの中心からずれた(off-centered)位置に存在しているという重要な情報が得られた。X線回折の実験からは水素は検出できないが、off-centered Na ionの存在は間接的に水素がインターカレーションされていることを意味している。Na-H-C_<60>三元系化合物はoff-centered Na ionを含むことに特徴があり、K_3C_<60>やRb_3C_<60>のようなアルカリ金属イオンがサイトの中心にいるような系とは異なった性質を示す。事実、K_3C_<60>やRb_3C_<60>に対して知られているT_cと格子定数の経験則にのらず、β-Na_xH_yC_<60>とは格子定数の割には低いT_cを示す。これはNaイオンが中心からずれることによるC_<60>に与えるクローンポテンシャルの非対称性によるものと推測される。一方、α-phaseはorthorhombicの結晶構造をもつことがわかった。α-phaseが超伝導を示さないのはcubic対称性の消失によるものと考えられる。
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