研究概要 |
1997年度において、水素を含む3成分系(Na-H-C_<60>)有機超伝導体の困難な製法についての方針を確立した。この3成分系有機超伝導体に含まれる水素が、単なる介在物質ではなく、超伝導体の伝導に直接関与することを、理論的に実証した(J.Phys.Soc.Japan 67,2802-2806(1998)に掲載)。 この3成分系の一員として、新しくK-H-C_<60>及びNa-NH_2-C_<60>の組成を持つ有機超伝導体を作成した。(KH)_3C_<60>は超伝導転移温度Tc(19.5K)及び格子常数(14.351Å)共にK_3C_<60>よりも大きく、熱分析の結果も、またNMRの測定結果からも、水素が成分として組み込まれていることを実測した。更に興味ある結果は、(NaH)_<4-x>(KH)_xC_<60>も超伝導を示す上、Na-H-C_<60>に比べて、きわめて安定な超伝導体をつくる事が出来た。更に、この混合の比率を(NaH)_<3.9>(KH)_<0.1>C_<60>にしても超伝導特性を示すことを見出した。これによって、水素を含む3成分系有機超伝導体を多量につくり出すことが出来るようになった。これを受けて、水素の存在及び挙動解析の切り札となる中性子回折測定のための多量の試料の作成が可能となり、今後の本研究の発展に大きな進展をみることが出来ると判断している。これらの結果は、既に論文としてまとめてJ.Phys.Chem.に投稿し受理されている。 これらの結果は水素還元によって異常な伝導性を示す嫌気性電子伝導物質シトクロムc_3(分子量13,955)の電導機構の解明に役立つと判断し、その研究を続行している。
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