研究概要 |
本研究では最終段階にDewarベンゼン体の異性化を活用するという新しいアプローチに基づいて環状[9]パラフェニレン(2),ジアセチレン拡張環状[6]パラフェニレン(4),および環状アセントリキノン(8)の合成を立案し,そのオリゴ-Dewarベンゼン型前駆体の構築に際して新たにアセタール架橋ジハロDewarベンゼン(5)およびビスジエン(7)を汎用性ビルディングブロックとして導入することを計画した。平成9年度は(i)トリスDewarベンゼン(1)の合成経路の探索,(ii)ジアルキニルDewarベンゼン(6)の酸化的カップリングによる環状6量体の合成の検討,(iii)ビスジエン型ビルディングブロック(7)の合成とそのDiels-Alder反応性の検討を行なった。 (i)4,4'-ジブロモトランとビニレンカーポネートとの光[2+2]付加体の環状三量化による1の合成を試みたが、1を得るには至らなかった。今後他の合成経路を探索する予定である。 (ii)5とトリメチルシリルアセチレンとのカップリングと続く脱保護により、6を重合に対して不安定な化合物ながら合成することができた。さらに6の酸化的カップリングによる3の一段階合成を試みたが、鎖状オリゴマーを得るにとどまった。一度、鎖状6量体を単離した後に、その分子内環化を検討する必要があると考えている。 (iii)アセチレンジカルボン酸ジメチルから4段階で7の合成を達成した。またそのDiels-Alder反応性を検討し、フマル酸ジメチル、ナフトキノン、スルホニルアレン等、低反応性のジエノフィルとの反応は進行しないが、N-フェニルマレイミド、ベンゾキノン、DMAD等高反応性ジエノフィルとは合理的な収率で反応が進行することを明らかにした。今後ベンゾキノン付加体の8への誘導を検討する予定である。
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