研究概要 |
シガトキシン(CTX)は,魚介類による世界最大規模の食中毒シガテラの原因毒である。年間2万人以上もの中毒患者が発生するので社会的な大問題となっており,中毒予防のための抗シガトキシン抗体の開発が急務である。しかし,CTXは天然から極微量しか得ることができないので,抗体調製が滞っている現状にある。そこで化学合成によるCTXの供給を目的として本研究を行った。CTXの様な巨大分子の全合成は非常に困難であり,新規な化学合成の方法論の開発は必要不可欠である。特に効率的な各フラグメントの連結法の開発は重要な課題である。前年度までにアルキル化反応とオレフィンメタセシス反応を利用した連結法を確立した。今年度は,この方法を利用してCTXのABCDE環部の立体選択的合成を完了した(発表済)。また,Tebbe試薬を用いた閉環メタセシス反応と立体選択的アセタールの還元を利用し,CTXのIJKLM環部の立体選択的合成を完了した(発表済)。現在,これらのフラグメントを用いて全合成の最終段階を検討中である。
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